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インタビュー

小澤先生インタビュー

小澤紀美子

1994年の賞設立から20回目を数えたコカ・コーラ環境教育賞。選考委員長として20年間日本各地で展開されている地域の保全活動に触れてきた小沢先生に、環境教育に込めた思いから、当財団に期待されていることまでインタビューにお答えいただきました。

−小澤先生、こんにちは。今日は、環境教育について教えてください。環境教育というと、環境の大切さを学ぶ勉強、というイメージがありますが、いかがでしょうか?

よく誤解されるのが、環境教育とは環境の問題を教えることだ、というものです。これは間違いですね。私はあえて「環境学習」と呼ぶのですが、自分を取り巻く環境を通して通じて、生涯を通じて通しての「生き方を学ぶ」のが環境教育だと考えています。

−「生き方を学ぶ」環境教育?どういうことでしょうか?

暗記するタイプの勉強は、子どもたちにとって、受身の学習です。ある意味、口をあけていれば、先生が情報を放り込んでくれる。でも、自然に触れると、「なぜ?」「どうして?」という問いを主体的に発するようになり、これが探究する力につながります。文部科学省の学力テストでも、探究活動をやっている子どもたちは、学校の成績が良いという成果がはっきりと出ています。

−子どもが主体的に物事を考えるきっかけになるテーマのひとつが、「環境」なのですね。

自然の中に行くと、子どもたちは、まず小さな生き物の命を発見します。そして、ごみの存在にも気づく。すると、次に行くときには、自らビニール袋を持っていって、ごみを拾ってきたりする。こうして、自分たちなりに考えて行動に移す自主性が大事です。子どもたちが、小さいころから自然の不思議さ、神秘さに触れる機会を作ることで、こうした自主性を育てることができるのです。

−お題目を唱えるだけの“環境教育”ではだめなんですね。

ただ自然に触れて、道徳的な訓戒を垂れるという活動は、子どもにはまったく響きません。子どもは、本当によく大人を見ています。ほら、大人だってポイ捨てしているじゃないか、とかね。あとは、方法論も大切です。「水は大事ですよ」というのではなく、どうやって水の大切さに気づかせるか。私たちが、コカ・コーラ環境教育賞で評価しているのは、地方の小さい地域田舎や島で、地域の方々人が一緒になって、みんなで取り組んでいる活動です。子どもだけではなく、大人も一緒になってみんなで取り組むことで、子どもたちがふるさとに愛着を持つようになります。

−小澤先生、こんにちは。今日は、環境教育について教えてください。環境教育というと、環境の大切さを学ぶ勉強、というイメージがありますが、いかがでしょうか?

よく誤解されるのが、環境教育とは環境の問題を教えることだ、というものです。これは間違いですね。私はあえて「環境学習」と呼ぶのですが、自分を取り巻く環境を通して通じて、生涯を通じて通しての「生き方を学ぶ」のが環境教育だと考えています。

−「生き方を学ぶ」環境教育?どういうことでしょうか?

暗記するタイプの勉強は、子どもたちにとって、受身の学習です。ある意味、口をあけていれば、先生が情報を放り込んでくれる。でも、自然に触れると、「なぜ?」「どうして?」という問いを主体的に発するようになり、これが探究する力につながります。文部科学省の学力テストでも、探究活動をやっている子どもたちは、学校の成績が良いという成果がはっきりと出ています。

−それが、高学年での学習にもつながりますか。

身近な環境について考えると、必ず持続可能性という課題に突き当たります。さらに世界を見れば、途上国の平和の問題や、資源の使い方の問題にもつながる。幼いころから主体的に考える力をつけることで、成長段階に応じて、物事の複雑性を理解して、複眼的に考える力を身につけることができます。環境教育が文部科学省の学習指導要領の総合的な学習の時間に入ったのは、複雑な要素を自らにひきつけて考え、相互に結び付けていく、課題解決型の能力を育成することができるからです。その過程では、想像力、コミュニケーション力、学びと体験を結びつける力、創造性も、ともに育っていきます。それが、子ども自身の骨格を太く育て、生きる力につながるのです。

−コカ・コーラ環境教育賞は2013年に第20回を迎えました。第1回から関わっている小澤先生から見て、日本の環境教育はどのように変わってきていますか?

当初20年前は、先駆的な地域の会の受賞が大半を占めていましたが、学校に総合的な学習の時間が導入され、学校での学びが地域に広がり、地域と学校の協働活動の応募が増えてきました。それと同時に、応募してきた活動の質が上がってきていることを実感しています。自然と人とのかかわりから生み出された、水と自然の循環が織りなす文化の多様性と持続性、その多様性がもたらす学びを深める可能性に感動を覚えます。

−受賞団体の中で印象に残っている取り組みはありますか?

次世代部門が設置された第16回からの高校生の地域の持続性を視野に入れた取り組みですね。これらは、地域活性化のモデルとしても、未来への責任とビジョンを共有し、新たな物語を紡ぎだす確かな力を発揮していると思います。例えば、授業の中の課題研究で大賞をとった置賜農業高校の活動。ワインの搾りかすを廃棄するのではなく、農業高校で飼育している鶏や豚などの良質な飼料として活用再生することで、結果として、料亭企業が食材として採用するに至りました。この活動は、後に、リデュース・リユース・リサイクル推進功労者表彰の中で、内閣総理大臣賞を受賞しています。

−北海道栗山町にある「コカ・コーラ環境ハウス」を授業の現場になさっていますね。

私が教えていた東海大学では、冬にコカ・コーラ環境ハウスを活用した環境保全実習をやっていました。神奈川の湘南キャンパスの学生に、いくら「マイナス30度の世界」と言葉で伝えてもピンと来ません。でも、栗山では、お風呂に入って出たらタオルが瞬時に凍るくらい寒い、という経験をさせることができまする。北海道の冬では、雪は確かに大変ですが、逆に考えれば、冷蔵庫がなくても野菜を保存ができるという面もあります。関東から来た学生が、栗山町で雪の下に保存している野菜を掘り起こす経験をする。さらに、そうやって保存されたキャベツが、アミノ酸を糖分に変えて痛めつけられたことで甘みを増していることを知ることができます。

−地域の資源を活かした学習ができるのですね。

もうひとつ重要なのは、地域に入って学ぶことで、いろんな人が関わっていることを、身をもって知るということです。今は大学教育が分断化され、ミクロに専門化されていますが、環境を考えるには、もっと統合された考え方をしなくてはいけない。だからこそ、栗山町に滞在して来て、多様なセクターと協働コラボレーションすることがどういうことなのかを学んでほしい。博物館の館長さんに栗山町の開拓の歴史を語っていただく、地元の環境保全活動の方々と里山の自然を体験する、ふるさと教育をあえて栗山町教育長にお話していただく。そうして得たさまざまな情報から、第六次産業化する戦略を考えることで、環境リーダーに必須の戦略的思考を学んでほしいのです。

−自然の資源だけではなく、人という資源も活かすことが大事なのですね。

そう。しかも、栗山町には美味しいものがある!美味しいものを食べて、心・胃袋・頭がすべて納得して、自分で統合化していく力をつけることができると思います。

−当財団に期待されていることは、どんなことでしょうか?

企業の持つ、戦略的思考やしなやかさを関わった人たちに伝えること、そして協働コラボレーション力を生かしていただくことではないでしょうか。次世代リーダーとしては、戦略的に物事を考えていくということが大事。でも一方でしなやかさも必要です。長く事業を継続している企業として、これらの特性を財団の事業の中でも発揮されており、私たちも学ぶところがあると思います。そしてもうひとつ重要なのが「コラボレーション力」。今後とも協同・協働による、ともに育みあう関係性が広がることを期待しています。

プロフィール
コカ・コーラ教育・環境財団理事
東京学芸大学名誉教授

東京大学大学院工学系研究科博士課程修了(建築学専攻)後、日立製作所システム開発研究所を経て、現在、東京学芸大学名誉教授・東海大学大学院客員教授。
前日本環境教育学会前会長・こども環境学会会長・中央環境審議会委員など。工学博士、技術士(地方及び都市計画)。
著書に『環境保全と環境政策』(岩波書店)、『まちは子どものワンダーらんど−これからの環境学習』(風土社)、『まちワーク:地域と進める校庭&まちづくり総合学習』(風土社)、『環境教育』(金子書房)等多数。
なお日本学術会議環境学委員会20期・21期環境思想・環境教育分科会委員長として「学校教育における環境教育の充実に向けて」(20期)、「高等教育における環境教育の充実に向けて」(21期)を提言した。
さらに子ども一人ひとりの思考過程や価値観の違い、あるいは子どもが自己と環境との相互作用による変容の過程を重視し、「教育Educate」の本質的は、もっている力を「引き出す」ことであり、他者からの承認や自己肯定感を醸成し、「学ぶ意欲」を育むこと、環境教育の「教育」の意味は社会変革の意味を包含している、という立場で、「知の統合」という観点から実践・研究を進めている。

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